vol.3 豊かな海を守り、次世代に繋ぐために

今、海洋汚染や乱獲などによって、水産資源が枯渇に向かっていると言われています。これは漁業に関わる私たちにとって見逃せない問題です。

ここ数年、環境問題を語る上で「サステナブル」(=持続可能な)という言葉を耳にするようになりました。海の豊かさを次世代に残すための取り組みとして、持続可能な漁業や養殖業で獲られた「サステナブル・シーフード」が世界で注目を集めています。

大手企業でもサステナブル・シーフードを導入する流れが進んでいますが、まだまだ日本の一般消費者にとっては遠い話のように感じてしまうかもしれません。

日本の食卓から魚食文化をなくさないためにも、まずは一人ひとりの意識が必要だと感じています。今回は、私たちの身近にあるサステナブルな取り組みについて紹介します。

氷見で400年以上続く定置網漁

氷見は越中式「定置網漁」発祥の地として知られています。江戸時代から400年以上続く漁法で、現在も富山湾では定置網漁が盛んに行われています。

定置網漁とは名前の通り、一定の場所に網を設置し、集まってくる魚を待ち受ける漁法です。まき網や底引き網の場合は追いかけた魚をほとんど獲り尽くしてしまいますが、定置網は一度網に入った魚も逃げ出せるという特徴があります。

氷見漁港には定置網漁で獲られた魚が水揚げされる

そのため捕獲するのは網に入る魚の2〜3割。資源を獲り尽くさない漁業として近年注目されているのです。そして何より、魚に与えるストレスや傷を最小限に抑えることができます。海にも、魚にもやさしい定置網漁が、氷見の魚がおいしいと言われる理由の一つなのかもしれません。

また、氷見は漁港から漁場までの距離が近いため、漁船の燃料が少なくて済むなど、SDGsの観点から見ても評価されています。

廃棄される魚の皮をフィッシュレザーに

魚にはいろいろな食べ方がありますが、ほとんどは身の部分だけを食べ、皮・骨・頭などは廃棄されてしまいます。このように本来捨てられてしまう魚の皮を「フィッシュレザー」に加工し、名刺入れや財布として製品化しているのが、フィッシュレザーブランド「tototo」代表の野口朋寿さんです。

ブリ、スズキ、タイ、ヒラメなど、それぞれ鱗模様の違いが面白い

野口さんは氷見の魚屋さんなどから廃棄分の魚の皮を引き取り、自らの手でレザーに加工しています。丈夫でしなやかな革にするためには“なめし”と呼ばれる作業を行いますが、それには燃焼時に毒性の強い物質に変化する化学薬品(クロム)を使うのが一般的です。しかし野口さんは環境に配慮したいと、植物から抽出したタンニンを使用しています。

実験に3年、商品化に2年もの時間をかけたと話す野口さん

生命の恵みを無駄にしない、まさに持続可能なものづくり。フィッシュレザーを作るためには時間もコストもかかりますが、2020年のブランド立ち上げ以降、野口さんの想いに共感する人もだんだん増えてきたと言います。まだスタートしたばかりのブランドですが、私も氷見の漁業にかかわる一人として、この取り組みを応援していきたいと思っています。

tototo オンラインショップ:https://www.tototoleather.com/

氷見の豊かな海を守るために

当社が魚問屋としてこれから取り組んでいきたいのは、水揚げされても廃棄されてしまう“売れない魚”に価値をつけていくことです。魚の食べ方を伝えたり、自社の開発技術を活かして食べやすいよう加工品にしたり…。氷見の魚問屋として、きちんと消費者に氷見の魚を届けることに使命感を感じています。

これからもますます、サステナブルな取り組みへの関心は高まっていくことでしょう。氷見の豊かな漁場がいつまでも守られるように。私たちもさまざまな取り組みを支援し、広めていくとともに、自ら行動していきたいと思います。